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肝(かん)がん

目次

肝がん

肝がんには肝細胞(かんさいぼう)がん、胆管細胞(たんかんさいぼう)がんなどの原発(げんぱつ)(せい)(かん)がんと大腸(だいちょう)がんなどの転移性肝(てんいせいかん)がんがあります。
肝細胞がんはウイルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎)、アルコール性肝炎(かんえん)、非アルコール性脂肪肝(しぼうかん)(えん)などによる肝臓の慢性(まんせい)炎症(えんしょう)が原因で肝細胞から発生します。胆管細胞がんは肝臓の中を走る(かん)(ない)胆管(たんかん)から発生します。転移性肝がんは大腸がん、胃がんなどが門脈(もんみゃく)などの血管を介して肝臓に転移したものです。

肝がんの症状

早期の肝がんは症状が出ることが少ないです。がんが大きくなると黄疸(おうだん)腹痛(ふくつう)発熱(はつねつ)倦怠感(けんたいかん)などの症状が出ることがあります。ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎などの患者さんは早期で肝がんを発見するために定期的に採血、腹部超音波検査、CT検査などを受けることが重要です。

肝がんの診断

肝細胞がんは採血による腫瘍マーカー、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などの画像検査で診断します。採血や画像検査で診断ができない場合は腫瘍に針を刺して組織を採取する肝生検(かんせいけん)を行います。

肝がんの進行度(Stage)

①腫瘍の大きさが2cm以下、②腫瘍が1つ、③血管や胆管の浸潤(しんじゅん)がない、④リンパ節転移の有無、⑤()臓器(ぞうき)転移(てんい)の有無によりStage Ⅰ、II、Ⅲ、ⅣA、ⅣBに分類されます。

  • Ⅰ:リンパ節転移や他臓器転移がなく①②③すべて当てはまる
  • Ⅱ:リンパ節転移や他臓器転移がなく①②③のうち2つ当てはまる
  • Ⅲ:リンパ節転移や他臓器転移がなく①②③のうち1つ当てはまる
  • ⅣA:他臓器転移がなくリンパ節転移があるか①②③すべてが当てはまらない
  • ⅣB:他臓器転移がある

原発性肝がんの治療

手術

原発性肝がんに対する治療は手術と内科(ないか)(てき)治療(ちりょう)()手術(しゅじゅつ)治療(ちりょう))に分かれますが切除可能であれば手術が最も有効です。Stage ⅠからⅢの肝がんが手術の適応になりますが切除が可能かの判断は(かん)予備(よび)(のう)(かん)切除(せつじょ)(りょう)によって決まります。肝予備能に対して切除量が大きすぎると術後肝不全など重篤(じゅうとく)合併症(がっぺいしょう)を起こす危険があります。

肝切除には切除量が最も小さい部分(ぶぶん)切除(せつじょ)から最も切除量が大きい拡大(かくだい)()(よう)切除(せつじょ)などさまざまな(じゅつ)(しき)があります。術式は腫瘍の位置、大きさ、血管や胆管の浸潤によって決められます。CTで肝実質や脈管、腫瘍などの三次元(さんじげん)画像(がぞう)構築(こうちく)し切除肝と(ざん)(かん)容積(ようせき)を計測することが可能です(volumetry)。肝予備能はICG検査、肝障害度、Child-Pugh分類などで評価します。最終的に肝切除量、肝予備能、年齢(ねんれい)などから手術の安全性を評価して手術の適応、術式を決定します。

肝予備能が悪く(Child-Pugh分類C)一定の条件(ミラノの基準)を満たした肝がんに対しては肝移植(かんいしょく)を行う場合もあります。肝移植の適応(てきおう)の場合は移植可能な病院を紹介します。

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内科的治療(非手術治療)

穿刺(せんし)局所(きょくしょ)療法(りょうほう)

切除(せつじょ)困難(こんなん)なStage ⅠからStage Ⅲの肝がんで3cm以下の腫瘍に対しては穿刺(せんし)局所(きょくしょ)療法(りょうほう)を行います。皮膚から肝臓に治療用の針を刺して腫瘍(しゅよう)()くラジオ()焼灼(しょうしゃく)(じゅつ)(RFA)やエタノール注入(ちゅうにゅう)療法(りょうほう)(PEIT)があります。

肝動脈(かんどうみゃく)塞栓術(そくせんじゅつ)(TACE、TAI)

切除困難なStage ⅠからStage Ⅲの肝がんで3cm以上の腫瘍に対しては肝動脈塞栓術(かんどうみゃくそくせんじゅつ)(TACE、TAI)を行います。足の付け根や肘から動脈に挿入したカテーテルから(こう)がん(ざい)塞栓(そくせん)物質(ぶっしつ)注入(ちゅうにゅう)します。

全身化学療法

Stage Ⅳの肝がん、手術や局所療法ができない肝がんに対しては抗がん剤による全身(ぜんしん)化学療法(かがくりょうほう)を行います。全身化学療法で肝がんが完治(かんち)することは(まれ)ですが、延命(えんめい)効果(こうか)や痛みなどの症状を緩和(かんわ)する効果があります。

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