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膵(すい)がん

目次

膵がん

膵臓(すいぞう)膵液(すいえき)という消化(しょうか)(えき)を作っています。膵臓で作られた膵液は膵管(すいかん)を通って十二指腸の乳頭部から消化管に分泌されます。また膵臓はインシュリンなどのホルモンを血中に分泌(ぶんぴつ)血糖(けっとう)をコントロールしています。

(すい)がんは症状が出にくく、多くの場合かなり進行しないと症状が出ません。また膵臓は胃の後ろで背骨(せぼね)腹部(ふくぶ)大動脈(だいどうみゃく)の前にある臓器(ぞうき)(たい)(ひょう)からは触れません。胃や大腸のように内部を内視鏡で見ることもできません。そのため早期で発見することが困難(こんなん)な病気です。膵がんの半分(はんぶん)以上(いじょう)が切除困難な状態で発見されます。

膵がん

膵がんの症状

膵がんの症状の一つは黄疸(おうだん)です。黄疸になると肌、特に白目(しろめ)黄色(きいろ)くなったり、尿(にょう)()黄色(きいろ)になります。胆管炎(たんかんえん)膵炎(すいえん)併発(へいはつ)すると発熱(はつねつ)腹痛(ふくつう)が出ます。糖尿病(とうにょうびょう)悪化(あっか)で発見されることもあります。膵がんが膵臓の周囲に浸潤すると背部(はいぶ)(つう)や腹痛が出ます。また食欲(しょくよく)低下(ていか)体重(たいじゅう)減少(げんしょう)します。

膵がんの診断

膵がんはCT検査、MRI検査、腹部超音波検査(ふくぶちょうおんぱけんさ)などで膵臓内の(しゅ)(りゅう)として発見されます。膵がんが疑われた場合、内視鏡検査(ないしきょうけんさ)(ERCP、EUS)で腫瘍(しゅよう)の位置、大きさ、周囲への広がりなどを調べます。同時に膵液(すいえき)採取(さいしゅ)して細胞(さいぼう)(しん)を行ったり、腫瘤に(はり)()して採取した組織(そしき)病理検査(びょうりけんさ)を行って診断(しんだん)確定(かくてい)します。EUS、CT検査、MRI検査などでがんの浸潤(しんじゅん)範囲(はんい)、リンパ(せつ)転移(てんい)()臓器(ぞうき)転移(てんい)の有無を調べます。

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膵がんの進行度(Stage)

膵がんは主に膵臓の内部の膵管(すいかん)から発生して徐々に増大し、進行すると膵臓の外に浸潤(しんじゅん)周囲(しゅうい)血管(けっかん)や他の臓器に(およ)びます。膵がんの進行度は腫瘍の大きさ、膵臓の周囲への浸潤、腹腔(ふくくう)動脈(どうみゃく)(じょう)腸間膜(ちょうかんまく)動脈(どうみゃく)への浸潤(しんじゅん)、リンパ(せつ)転移(てんい)や他臓器転移の有無によって大まかにStage Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳに分類されます。

  • Ⅰ:がんが膵臓内にとどまる
  • Ⅱ:がんが膵臓の外に広がっている、またはリンパ節転移がある
  • Ⅲ:がんが腹腔動脈(ふくくうどうみゃく)または、上腸間膜動脈(じょうちょうかんまくどうみゃく)(およ)
  • Ⅳ:他臓器転移がある

また手術が可能かどうかにより以下の3つに分類されます。

  • 切除可能(せつじょかのう):遠隔転移がなく手術でがんが完全に取り切れる可能性が高い膵がん
  • 切除可能境界(せつじょかのうきょうかい):遠隔転移はないが、手術してもがんの()(のこ)しが生じる可能性がある膵がん
  • 切除不能(せつじょふのう)遠隔転移(えんかくてんい)血管浸潤(けっかんしんじゅん)により手術ではがんが()()れない膵がん
膵がんの進行度

膵がんの治療

胆管ドレナージ

黄疸がある場合、内視鏡でステントという細い管を胆管の狭窄部に挿入して胆汁が十二指腸に流れるようにして黄疸(おうだん)改善(かいぜん)します。

切除可能膵がんに対する治療

膵がんに対する唯一(ゆいいつ)根治(こんち)(てき)治療(ちりょう)は手術です。しかし手術でがんが取りきれていても再発(さいはつ)(りつ)(たか)治療(ちりょう)成績(せいせき)は良くありません。近年、有効な抗がん剤が増えてきたため治療成績を上げるために手術と化学療法(かがくりょうほう)を組み合わせるようになってきました。

術前化学療法

切除可能膵がんに対しては手術前に化学療法を数か月から半年行う場合があります。術前化学療法を行うことで生存率(せいぞんりつ)がよくなるという報告もある一方で、化学療法(かがくりょうほう)副作用(ふくさよう)が強く出る場合や化学療法が効かない場合もあるため患者さんの年齢、体力なども考慮(こうりょ)して治療法(ちりょうほう)を選択します。

手術

遠隔転移がなく切除可能な膵がんに対しては手術を行います。膵臓は十二指腸(じゅうにしちょう)側(右側)の(すい)頭部(とうぶ)、真ん中の膵体(すいたい)()脾臓(ひぞう)(がわ)(左側)の膵尾(すいび)()に分けられます。

膵頭十二指腸切除

腫瘍が膵頭部にある場合は膵頭十二指腸(じゅうにしちょう)切除(せつじょ)を行います。

膵体尾部切除

膵体部または膵尾部にある場合は膵体(すいたい)尾部(びぶ)切除(せつじょ)を行います。

膵全摘

膵頭部から膵体尾部に広がる場合は(すい)全摘(ぜんてき)を行います。

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術後化学療法

手術後に経口の(こう)がん(ざい)半年(はんとし)(かん)投与(とうよ)します。術後(じゅつご)化学療法(かがくりょうほう)により再発(さいはつ)(りつ)が減少するという報告もある一方で、化学療法の副作用で栄養障害や体力低下が悪化することもあるため、抗がん剤を減量したり化学療法を行わない場合もあります。

切除可能境界膵がんに対する治療

切除(せつじょ)可能(かのう)境界(きょうかい)(すい)がんに対しては手術を行ってもがんが完全に取り切れないことがあるため化学療法を行います。化学療法で腫瘍(しゅよう)が縮小しがんを残さず切除できるようになってから手術を行います。切除可能とならない場合は化学療法を継続します。

切除不能または再発性膵がんに対する治療

切除(せつじょ)不能(ふのう)(すい)がんや根治(こんち)手術(しゅじゅつ)()に再発した再発性膵がんに対しては化学療法または放射線治療を行います。化学療法や放射線治療で切除不能膵がんや再発性膵がんが完治(かんち)することは(まれ)ですが、延命(えんめい)効果(こうか)や痛みなどの症状を緩和(かんわ)する効果があります。