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白血病(はっけつびょう)

目次

白血病とは

"白血病"という名称は時々耳にされると思います。しかし"胃がん""肺がん"などの、いわゆる"固形(こけい)がん"と比較して病気のイメージが(つか)みにくいのではないでしょうか。
白血病は(ぞく)に"血液(けつえき)のがん"と呼ばれます。障害される臓器は"骨髄(こつづい)"です。骨髄は骨の中に存在する臓器で、別名"造血(ぞうけつ)()"とも呼ばれます。骨髄において発生する"がん"が"白血病"です。
骨髄の中では、3系統の血球成分、すなわち白血球(はっけっきゅう)赤血球(せっけっきゅう)血小板(けっしょうばん)が産生されます。正常な骨髄(こつづい)標本(ひょうほん)顕微鏡(けんびきょう)で観察すると、これらの3系統に由来する細胞が、(よう)若~(じゃく)成熟(せいじゅく)細胞(さいぼう)に至るまで様々な分化(ぶんか)段階(だんかい)で存在しているのが観察されます。それらの細胞の成熟過程のどこかの段階で"(がん)()"が起こると白血病が発症します。どの系統の血球のどの成熟過程の細胞が癌化したかにより、白血病は大きく、急性と慢性、骨髄性とリンパ性の4つに分類することができます。
すなわち、急性骨髄性白血病(きゅうせいこつずいせいはっけつびょう)急性(きゅうせい)リンパ性白血病(はっけつびょう)慢性骨髄性白血病(まんせいこつずいせいはっけつびょう)慢性(まんせい)リンパ性白血病(はっけつびょう)の4つです。
2020年の統計によりますと、白血病の罹患率(りかんりつ)は人口10万人に対し11~12人で、男性13人に対し女性は9人となっています。

白血病の症状

発病の早期から様々な症状を呈するのが急性白血病の特徴です。
急性白血病では白血病細胞が骨髄中で際限なく増殖しますから、正常な造血が抑制されます。その結果、正常な白血球、赤血球、血小板が減少します。正常白血球が低下すると肺炎(はいえん)などの感染症(かんせんしょう)合併(がっぺい)しやすくなり、高熱(こうねつ)が続くなどの症状を呈します。赤血球が低下すると動悸(どうき)息切(いきぎ)れなどの貧血(ひんけつ)症状(しょうじょう)、血小板が低下すると、手足の皮膚に皮下(ひか)出血(しゅっけつ)(てい)したり、鼻血(はなぢ)歯肉(しにく)出血(しゅっけつ)を呈したりします。その他、細胞の増殖の度合や組織への浸潤(しんじゅん)(せい)有無(うむ)によって、全身の骨の痛みであったり歯肉やリンパ節の腫脹を伴ったりすることもあります。
一方、慢性白血病では初期にはほとんどが無症状です。健康診断(けんこうしんだん)などで白血球数の増加を指摘(してき)されて精密検査(せいみつけんさ)のため病院を受診して診断されるケースがほとんどです。

白血病の治療

急性白血病の治療

近年、白血病の研究が進んだことにより、遺伝子解析(いでんしかいせき)の結果によって治療(ちりょう)戦略(せんりゃく)(そう)(べつ)()し、病態(びょうたい)に応じて種々(しゅじゅ)分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)を治療に組み込んでゆくという時代が到来しつつあります。
通常、比較的(ひかくてき)若年(じゃくねん)で強力な治療に()えられると判断される場合は、従来(じゅうらい)からの複数の(こう)がん剤を組み合わせた多剤併用(たざいへいよう)化学療法(かがくりょうほう)が用いられますが、遺伝子(いでんし)異常(いじょう)の有無により分子標的薬が併用される場合もあります。一方、強力な化学療法に耐えられそうもないと判断された場合には、少量の抗がん剤と分子標的薬を、単独(たんどく)もしくは併用して治療を行うことが多いです。
白血病の治療(ちりょう)(ちゅう)治療(ちりょう)()には、白血病細胞のみならず、正常な血球成分も減少しますので、低下した血球を(おぎな)うためにしばしば輸血(ゆけつ)が行われます。また感染症の発症を予防するため無菌(むきん)(しつ)を使用することもあります。
難治(なんじ)(せい)の白血病に対しては、患者さんの状態が(ゆる)せば造血(ぞうけつ)細胞(さいぼう)移植(いしょく)を行うことがあります。

慢性白血病の治療

現在、慢性(まんせい)白血病(はっけつびょう)の治療は、骨髄性、リンパ性ともに、分子標的治療が第一選択となっています。基本的には外来で通院しながら治療を行います。特に慢性骨髄性白血病は、チロシンキナーゼ阻害(そがい)(やく)というお薬を内服することでほとんどの患者さんに長期的な寛解(かんかい)が得られ、内服薬のみで完治が目指せる時代になってきています。

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