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甲状腺がんの概要
甲状腺は重さ10~20gの小さな臓器で、のどぼとけ(甲状軟骨)のすぐ下にあり、気管を
前から取り囲むように位置しています。甲状腺には、甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3、サイロキシン:T4)やカルシトニンなどのホルモンを分泌する働きがあります。
甲状腺がんは、甲状腺に発生する悪性腫瘍で、主に以下の4種類に分類されます。
- 乳頭がん:90%を占める最も一般的な甲状腺癌で進行が遅く、予後が良好。
- 濾胞がん:やや進行しやすいが治療により良好な経過のことが多い。
- 低分化がん:乳頭がん・濾胞がんより再発転移はしやすい。
- 髄様がん:遺伝性のものもある。
- 未分化がん:極めてまれだが、進行が非常に速く、予後が悪い。
甲状腺がんの症状
- 首のしこりや腫れ
- 声のかすれ(反回神経麻痺)
- 呼吸困難(気管の圧排)
- 嚥下困難
甲状腺がんの診断方法
- 視触診:しこりの有無を確認。
- 超音波検査:腫瘍の大きさ・形状を評価。
- 細胞診検査:穿刺吸引細胞診によるがん細胞の確認。
- 血液検査:ホルモン値や腫瘍マーカー(カルシトニン、サイログロブリン)測定。
- CT・MRI・PET検査:転移の有無を評価。
甲状腺がんの進行度(ステージ)
乳頭がん・濾胞がん・低分化がんは、一般的に若年者は予後が良いため、55歳を境にステージも異なります。55歳未満の場合には、T・Nカテゴリーに関係なく、遠くの臓器への転移の有無(Mカテゴリー)によってⅠ期かⅡ期に分類し、Ⅲ期以上のステージ(病期)の分類はありません。
一方で、55歳以上の場合は、がんの大きさ・広がり・リンパ節や別の臓器への転移の有無によって、Ⅰ期~ⅣB期に分類されます。
髄様がんは年齢にかかわらずがんの大きさ・広がり・リンパ節や別の臓器への転移の有無によって分類されます。
未分化がんのステージは、年齢にかかわらず、ⅣA・ⅣB・ⅣC期に分類されます。詳しくは、国立がん研究センターがん情報サービスをご参照ください。
(https://ganjoho.jp/)
甲状腺がんの治療法
- 手術療法(甲状腺片葉切除、全摘±リンパ節郭清)
- 放射性ヨウ素内用療法
- 甲状腺刺激ホルモン抑制療法
- 化学療法
- 放射線治療
- 分子標的薬
- 免疫チェックポイント阻害剤
甲状腺がんは、種類によって進行の速さや治療法が異なります。乳頭がんや濾胞がんは比較的進行が遅く、予後も良好ですが、未分化がんは進行が非常に速いため、早期発見が重要です。治療方針は患者さんの状態に応じて決定されるため、専門医と十分に相談し、最適な治療を選択することが大切です。
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