脊椎は頚椎、胸椎、腰椎および仙椎からなりますが、体の芯棒として、また神経の通り道としてとても重要な器官です。体幹を一本の脊柱として支えているため、絶えず大きな負荷が加わっています。そのために、加齢や外傷等によって障害を受けやすく、様々な脊椎・脊髄疾患が発生します。
高齢者人口の増加に伴って、非常に多くの患者さんが脊椎関連疾患を患って医療機関を受診しています。そのためこの領域の診断と治療技術の進歩はめざましく、時代に即した最良の医療を提供するには専門性の高いスタッフと最新の診断・治療器具の整備が必要となっています。
当院では整形外科内に脊椎・脊髄センターを設け、専門外来にて継続性のある治療を行っています。その内容の一部をご紹介します。
当センターでは幅広く脊椎疾患の治療に携わっていますが、特に正確な診断と最適な治療が求められる頚椎疾患の症例数が多いのが特徴のひとつです。より安全な手術を行うために、脊髄モニタリングや術中CTナビゲーションあるいは術中超音波診断装置などを取り入れ、術後はICUやHCUで全身管理を行うなどの対策をとっています。
また、2017年に本邦へ導入された頚椎人工椎間板置換術は、現在一定の条件をクリアした医療機関でのみ実施可能ですが、当センターでは当初から認定施設として使用を開始し、今日まで多くの実績を積み重ねています。胸腰椎疾患に対しては、従来からの筋温存型の椎弓形成術や内固定具を用いた椎体間固定術に加え、難治性と言われる脊椎後側弯症の手術療法にも積極的に取り組んでいます。
その結果、近隣および遠方の医療機関からのご紹介も多く、国内外から手術見学に訪れる医師・医療従事者も受け入れています。新設された手術室には手術用カメラやビデオ装置を設置して、医療者の教育や良質な医療の普及にも力を入れています。
脊椎・脊髄疾患の治療に際しては、医師や看護師、理学療法士、作業療法士、栄養士などの多職種によるチームワークがとても重要です。
当院にはそれぞれの分野で経験と実績を積んだスタッフが揃っており、最新の知識や技術の習得にも力を入れています。そのため、本邦の主要な学会や研究会に積極的に参加し、そこで得られる有益な情報を多職種で共有できるように勉強会やカンファレンスを定期開催しています。また、近隣の医療機関との連絡を密にし、円滑な医療連携を推進しています。
当センターのスタッフは国内外の主要な学会に所属して学術活動にも注力していますが、三原副院長は第13代のCSRS-AP(国際頚椎学会アジア太平洋部門)会長に就任し我が国の頚椎医療を牽引する役割を担っています。米国およびヨーロッパの頚椎学科とも連携を取りながら、より良い医療が本邦のみならず全世界に普及するよう活動しています。
また、NPO法人国際頚椎学会日本機構を設立し、国内の若手脊椎外科医の育成や、アジア地区の他国の医療支援にも力を注いでいます。
このような活動は当センターの実力を高めるとともに、世界的視野で医療の発展に貢献するという私達のSDGs(持続可能な発展目標)に基づくものです。
診療科・部門