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当院における虚血性心疾患の診療

横浜南共済病院 循環器内科
 HCU部長 藤井 洋之

はじめに

日本における急性心筋梗塞患者数は、2019年度75,733人と2015年度の68,850人と比べ増加傾向にあります。また2019年度の緊急PCI(経皮的冠動脈形成術)件数は78,420件、待機的PCI件数は192,670件と、いまだ相当多くの虚血性心疾患の患者が存在すると考えられます(循環器疾患診療実態調査報告:JROAD)。加えて冠攣縮性狭心症や微小循環障害(いわゆるシンドロームX、最近INOCA(Ischemia and No Obstructive Coronary Artery disease)という概念が提唱)もあり、これらも含めると実地医家の先生方の外来にも相当数の虚血性心疾患の患者がおられることが想定されます。

当院における虚血性心疾患検査、治療の特徴

①非侵襲的検査

虚血性心疾患の検査として、心エコー、負荷心エコー、負荷心電図、心筋シンチグラフィー、冠動脈CT、心臓MRIなどが挙げられます。近年PCIに当たり虚血評価が義務づけられ、一部混乱した病院もあるようですが、当院ではもともと虚血評価に力を入れており、冠動脈CTより心筋シンチグラフィーの件数が多いのが特徴です(2019年冠動脈CT/心筋シンチ:500,217/95,584(全国)、447/1,061(当院))。このため外来で十分な虚血評価をしていると自負しております。またいまだ発展途上ではありますが、萬野医長が赴任以降 負荷心エコーにも力を入れるようになってきたのも特徴の一つです。

②侵襲的検査

いわゆる心臓カテーテル検査ですが、造影による目視での評価のみならず、冠動脈内圧測定による虚血評価やOCT(光干渉断層法)やIVUS(血管内超音波)などの形態評価による精密な評価を心がけております。特に木村循環器検査部長はOCTの専門家であり、プラーク評価に尽力しております。原則は虚血の有無により侵襲的治療の適応を決めますが、近年虚血評価だけでは良好なアウトカムが得られないという研究も出てきており、当院では虚血と形態と両方を加味して治療決定を行い、不必要なPCIを避けつつも高リスク患者の治療に対する配慮を行っております。

③侵襲的治療

PCIの際にIVUSやOCTといった血管内画像評価が必須ですが、当院では木村循環器検査部長の尽力により、原則としてより精密なOCTをガイドとしたPCIを行っております。また他院ではあまり行われていない血管内視鏡にも以前から治療に取り入れており、OCTと組み合わせることで冠動脈内の詳細な情報を得つつ、精密かつ安全なPCIを行うように心がけております。さらに近赤外線を用いることで血管壁の脂質を可視化できるNIRS-IVUS(使える施設は限定的です)も適宜用い、多面的な病態把握に努めております。
以上のように病変の性状を把握したうえで、通常のバルーン・ステントのみでなく、石灰化の多い硬い病変に対してはロータブレーターやダイヤモンドバックといった石灰化を削る方法や、血栓の多い病変に対してはエキシマレーザーを用いた血栓の蒸散を図るなど、ケースバイケースで治療法を選択しております。また分岐部病変では方向性粥腫切除術でプラークを削り取る方法も行います。ダイヤモンドバックやエキシマレーザーは施行施設が限られております。
また治療後虚血が改善されたか適宜判断して、治療のエンドポイントを設定しております。

ダイヤモンドバック(OAS)

▲図: ダイヤモンドバック(OAS)

ロータブレーター(PTCRA)

▲図:ロータブレーター(PTCRA)

方向性粥腫切除術(DCA)

▲図:方向性粥腫切除術(DCA)

エキシマレーザー(ELCA)

▲図: エキシマレーザー(ELCA)

④その他

他院で行っていない試みとして下記のものがあります。

1)大動脈内視鏡

冠動脈内を内視鏡で観察する試みは数十年前から行っておりましたが、2015年ころから大動脈内の動脈硬化を可視的に観察することができるようになりました。当院でも初期からこの方法を取り入れ、全国でも数少ない大動脈内視鏡施行施設となっております。安全性を確認する全国多施設後ろ向き試験(2018年 16施設:EAST NOGA)にも参加しております。まだ研究段階ですが脳梗塞等の塞栓症の原因となる可能性が示唆され、全国規模の前向き研究(DREAM NOGA)にも参加し、今後の医療の発展に寄与できればと考えております。下図のごとくかなりインプレッシブな所見が認められ、決してまれではないため、動脈硬化に対する患者教育にも役立つのではないかと思います。

冠動脈内の内視鏡観察

▲図: 冠動脈内の内視鏡観察

2)微小循環評価

以前運動誘発性の胸痛や心電図変化はあるものの冠動脈狭窄や冠攣縮を認めない病態をシンドロームXと表現していたかと思います。久しくこの概念は忘れ去られていた感がありますが最近INOCAとして脚光を浴びつつあります。当院では以前から通常用いられるFFR, iFRといった冠動脈内圧指標のみならず冠動脈血流速度も加味したCFR(冠血流が何倍に増えうるか)やIMRなどの微小循環抵抗に関しても測定してきていました。冠動脈造影で見える血管に問題がなくても微小循環障害があれば予後が悪いことは知られており、早期から注目していたと自負しております。またINOCAは患者ご本人が苦しいにもかかわらず診断がつかず、つらい思いをさせてしまいがちな病態です。適切な診断、治療が必要かと思われます。

おわりに

当院においては虚血性心疾患に対して通常の診断治療はもちろん、他院で行われないような検査治療も組み合わせ、より精密な診療を心がけております。また、総合的に判断することによりPCIにこだわることなく最適な治療を提供したいと思っております。さらに大動脈内視鏡や微小循環評価などは通常の病院ではあまり行われない検査ですので、虚血性心疾患等の動脈硬化性疾患が疑われましたら、お気軽にご紹介お願いいたします。