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塞栓源不明の脳梗塞・動脈塞栓症

横浜南共済病院 循環器内科
 心臓カテーテル 部長 清水 雅人

脳梗塞の原因は、心原性脳梗塞と非心原性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)に分類されますが、原因疾患が不明なことも少なくありません。
塞栓源不明の脳梗塞(Embolic stroke of undetermined source)はESUSと呼ばれ、2014年にその重要性が提唱されました(Lancet Neurol 2014;13(4))。原因不明の脳梗塞の頻度は16-39%とも報告されています。

また全身の動脈(上下肢動脈、腸管などの腹部臓器の動脈)にも塞栓症が生じえますが、重篤な転帰となることも多く、塞栓源を特定できるか・その治療が可能かどうかは臨床上重要な問題となります。

ESUSや原因不明の動脈塞栓症の患者さんを前にしたとき、循環器内科医が鑑別すべき疾患は下記のように考えます。

発作性心房細動

ESUSのうちの多くは、発作時心電図が記録されていない心房細動かと思われます。ESUSに対する抗凝固療法は国際共同臨床試験(RE-SPECT ESUS試験、NAVIGATE ESUS試験など)で効果が否定されました。心房細動を「記録する」ことは、治療に結び付き予後を改善させる可能性があり、とても重要です。

24時間Holter心電図を行うことで、自覚症状がなくとも心房細動発作をみつけられることもあります。あるいはその24時間で心房細動が見つからなくても、1-2週間に一度は発作が生じるようであれば、イベントレコーダーという貸し出し用心電計もあります(図1)。これには患者さんが動悸を感じた時にボタンを押すタイプと、無症状の不整脈も記録できるタイプがあります。これらにより心房細動発作が発見されれば、抗凝固療法やカテーテルアブレーションによる治療、カテーテルによる左心耳閉鎖術などが可能になります。

それでは1-2週に一度でなく、数カ月に一度程度生じる発作の場合はどうでしょうか。このようなタイプの心房細動をみつけるためには、植え込み型心電図モニター(Implantable Cardiac Monitor:ICM)を検討します(図2)。てのひらに乗る程度のごく小さい心電図モニターを、前胸部の皮下に植え込むものです。最長で2年間程度記録ができ、かつ自宅の電話回線から病院にdataを飛ばすことで、早期の発見につながる遠隔モニタリングを行うこともできます。

植え込みは局所麻酔で10分程度で行える簡単なものです。移植後は生活の制限はなく、MRIも問題無く施行できます。当院でもICMにより多くのESUSの患者さんの心房細動を発見しております。

(図1)

▲図1: イベントレコーダー

(図2)

▲図2: 植え込み型心電図モニター

卵円孔開存症

特に若年者のESUSは、その1/3程度が卵円孔開存症(patent foramen ovalis: PFO)によるものという報告もあります。深部静脈血栓症は、通常は動脈塞栓症は起こしません。しかしこのPFOが存在すると、この穴を通って左心房から全身の動脈に血栓が流れていき塞栓症を生じることがあります。これを「奇異性塞栓症」といいます。

PFOは通常の経胸壁心エコーではなかなか見つからず、確実に診断するためには、経食道心エコーが必要です。経食道心エコーでは経胸壁心エコーでは観察困難な左心耳の血栓をみつけることや、大動脈の粥状硬化や解離を観察することもできます。
有症候性のPFOは外科手術の適応とされてきましたが、最近ではカテーテルによる治療による治療も可能となってきています。

肺動静脈瘻

頻度は低いものの見逃しがちな重要な疾患です。肺動脈と肺静脈の間に先天性の(まれには炎症・外傷・手術による)瘻孔がある疾患です(図3)。肺動脈の血圧は収縮期で20-30mmHg程度ですが、肺静脈は収縮期・拡張期とも5-10mmHg程度であるため、容易に肺動脈の血液は肺静脈に流れ込みます。このため低酸素血症が生じたり、前述のように深部静脈に血栓があると、この瘻孔を通って左心房から全身の動脈に流れて奇異性塞栓症を起こすことがあります。

欧米では遺伝性があり鼻出血を頻繁に起こす遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)に合併する場合が多いとされていますが、日本では遺伝性の無い孤発性の症例が多く、多発傾向のあるオスラー病と違い単発性の瘻孔例が多いことが知られています。

胸部レントゲンでは、特に心陰影と重なった場合は発見しづらいですが、胸部単純CTで非常に明瞭に診断できます。造影の必要はありません(治療に際しては、詳細な解剖位置を把握するため造影CTを施行し3D画像構築を行います)。

この肺動静脈瘻はカテーテルによるコイル塞栓術で治療することができます。4日程度の入院が必要になりますが、1-2時間程度の処置で、targetとなる瘻孔まで細いカテーテルを進め、バルーンで血流を遮断したのちに金属コイルを挿入し瘻孔を閉鎖する処置です(図4)。

(図3)

▲図3: 肺動静脈瘻(3D CT)

(図4)

▲図4: 肺動静脈瘻 コイル治療後のDSA

ESUSの患者さんの精査-南共済スタイル-

ESUSの患者さんの精査を依頼された際は、外来で経胸壁心エコー・採血などを行い結果を確認したのちに1泊2日の検査入院をお勧めしています。

まず入院日には胸部単純CTと経食道心エコーを行います。そしてご本人・ご家族にそもそもESUSがどのような病態であるのか、どのような原因があるのか、どのような検査を行いどのような治療を行っていくのか、それらの説明を行います。二日目にはICM移植を施行し同日退院いただく、というスタイルです。

この入院の最大の目的は、時間をかけてご本人・ご家族と面談をすることです。外来では時間の制限があり、複雑なESUSの説明を十分に行うことが困難です。ご本人・ご家族もあわただしい外来ではいろいろ質問したいことがあっても遠慮しがちです。「十分な時間をかけたインフォームド・コンセント(Informed consent:IC)」をもとに検査・治療を行うことは、ESUSの診療に限らず当科のモットーとしているところです。

脳梗塞・動脈塞栓症患者さん、急性発症時のみならず既往がある患者さんでもどうぞお気軽に当科にご紹介ください。当院脳神経内科や心臓血管外科とも協力し、最適と思われる検査・治療を模索し、患者さん・ご家族と一緒により良いより満足できる予後を目指していきたく思います。