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肝がん

肝がんに対する診療

1.肝がんとは

 原発性肝がんと転移性肝がんがあります。
 転移性肝がんについては原発腫瘍の治療方針に準ずることが多いので、ここでは省略します。
 原発性肝がんについては表1に示しますように、大半が肝細胞がんです。肝細胞がん以外の腫瘍に罹患する患者さんの数は少なく、治療は外科的な切除が基本となり、内科的な治療は確立されていません。

2.肝細胞がんの原因

 以前は肝炎ウイルス感染(B型肝炎、C型肝炎)が大半を占めていましたが、近年の抗ウイルス治療の発達により肝炎ウイルス以外の原因が増えています(図1)。その内訳をみるとアルコール性、非アルコール性脂肪性肝疾患が主な原因となっています(図2)。慢性的な肝障害から肝硬変に進行すると肝細胞がんが発生しやすくなります。アルコール多飲されている方や、アルコールを飲まないにもかかわらず脂肪肝を指摘されている方で、慢性的な肝障害を指摘されている方は肝硬変に進行させないことが大切です。そのためには採血や腹部超音波検査などで定期的なチェックをおすすめします。

3.肝細胞がんの診断

 日本肝臓学会による肝癌診療ガイドラインにおいて「画像診断は、肝細胞がんの診断において極めて重要な位置を占め、大部分の肝細胞がんは画像診断のみで確定診断することが可能である」と記載されている通り、多くの肝細胞がんは腹部超音波、T、MRI検査により特徴的な所見を示します。ただし、その所見を得るためには造影剤という薬を注射して施行する必要があります。造影剤の使用に際して下記の体質の方には注意が必要です。超音波検査における造影剤の場合、卵アレルギーの方、CT・MRIにおける造影剤の場合、気管支喘息、腎機能障害のある方、などです。また、MRIの場合、体内にペースメーカーなどの金属やインプラントのある方も検査ができない場合もあります。詳しくは外来担当医にお尋ねください。
 画像だけでは診断できない場合もあり、採血による腫瘍マーカーの増加(主にAFP、PIVKA-2があります)を参考にすることもありますが、最終的には腫瘍生検を行い病理学的な診断が必要な場合もあります。この検査は、超音波の機械で確認しながら肝臓に直接細い針を刺して組織を採取するため、出血・腹膜炎などの合併症の可能性があるため2泊3日の入院が必要です。

4.肝細胞がんの治療

 「肝細胞がん」と診断されたら、治療は基本的にガイドラインに従って行われます(図3)。がんの状態(大きさ・数・脈管侵襲*1・肝外転移*2)により治療方法が示されています。1つの状態でも2つ以上の治療法が示されており、患者さん個々の病態や全身状態に応じて選択していきます。
 さらに、肝予備能(肝臓の元気度合い*3)も治療選択に影響することが、他のがんにはない特徴です。

*1 がんが血管・胆管に浸潤していること
*2 他臓器に転移していること
*3 Child-Pugh分類:肝臓の元気さを表したもので、プロトロンビン時間、総ビリルビン、アルブミン、腹水、肝性脳症の5項目で3段階に分類したもの(表2)

各治療
①手術;外科で施行されます。
②焼灼;ラジオ波熱凝固療法(RFA):腹部超音波下で肝細胞がんに穿刺した針の先端より出る熱で腫瘍を凝固壊死させる方法です。3cm以内の腫瘍に対して効果がり、3個以内までであれば可能です。1回の治療で効果が期待できますが、合併症にも注意が必要です。主な合併症として、出血、疼痛、胆汁性腹膜炎、消化管穿孔などがあります。
 代替治療としてエタノール注入法(PEIT)があります。RFAが開発される前より施行されていた治療法で、RFAと同様に肝細胞がんに穿刺した針から、腫瘍内部にエタノールを注入し腫瘍を脱水壊死させる方法です。RFAよりも細い針での穿刺で、熱も発生しないため、出血や近隣臓器の損傷をはじめとした合併症が少なく、RFAの針では穿刺の難しい腫瘍に対して施行されます。ただし、RFAと異なり数回施行しないと効果が期待できないことが多く、入院期間が長めになることが多いです。
③塞栓;経動脈化学塞栓療法(TACE):細いカテーテルを足の付け根の動脈より挿入し、肝臓内まで進めます。そのカテーテルを通して、肝細胞がんに抗がん剤と塞栓物質を注入し、抗がん作用と阻血作用で腫瘍を壊死させる方法です。肝内多発病変に対するスタンダードな治療法ですが、繰り返し施行することによる肝予備能が低下しやすい問題があります。予備能が低下してしまうと、その次に全身化学療法を行うチャンスがなくなってしまうこともあるため、最近は他臓器への転移がなくてもTACEが効果ない場合は早めに全身化学療法に切り替えたり、TACEの効果が期待できないような腫瘍の場合は、初めから全身化学療法を選択することも多くなっています。
④ 動注;動注化学療法(HAIC):手技はTACEと同様ですが、抗がん剤を溶かした生理食塩水のみを注入し、TACEのような塞栓物質は併用しません。この治療法はエビデンスが確立されていませんが、以前よりその有効性は報告されていました。主に、TACEや全身化学療法が困難な肝予備能低下している患者さんに対して施行されます。
⑤全身化学療法;肝細胞がんに対する全身化学療法は、2009年に登場したソラフェニブ(ネクサバール○R )が進行肝細胞がんに対して初めてエビデンスを示されました。それ以前は、進行期になってしまうと標準治療がないため、各施設で工夫して対応するしかなく、他のがんに比べるとかなり遅れている領域でした。しかし、この十数年でエビデンスを得た薬剤も増え、7種類の治療法があります。使用する大まかな順番も決まっていますが、1-7番まで厳密に順番が決まっているわけではないため、より生命予後を延長する治療法の組み合わせを世界で模索している状況です。
 薬剤は免疫チェックポイント阻害剤あるいは分子標的薬のいずれかであり、従来の抗がん剤とは作用機序が大きく異なっています。
 免疫チェックポイント阻害剤は、がんに対してリンパ球などの免疫細胞が攻撃しやすい環境を整えてあげることにより、抗がん効果を発揮する治療法です。
 分子標的治療薬は、がん細胞の増殖を選択的に阻害する治療法です。
両治療法とも、他の多くのがん腫に対して使用されており、生命予後の改善に大きな役割を果たしています。ただし、従来の抗がん剤にはない有害事象もみられ、導入には十分な注意が必要であり、かつ肝予備能の良好なchild-Pugh Aの患者さんに対してしかエビデンスが示されていないため、基本的には予備能の低下した患者さんには使用できません。また、免疫チェックポイント阻害剤は、自己免疫肝炎や間質性肺炎などの疾患をお持ちの方は、その疾患を悪化させてしまう可能性があるため施行は困難です。
 治療法の選択については外来主治医と十分に話し合って決める必要があり、ご希望であれば他院のセカンドオピニオン外来へもご紹介が可能です。
⑥放射線治療;ガイドラインへの記載はありませんが、手術やRFAによる局所治療が対象となるような病変で、高齢や合併症などの問題で施行不可能あるいは困難な患者さん、侵襲的な治療を希望されない患者さんに選択肢として提示することが多くなっています。ただ、当院では施行していないため施行可能な施設へご紹介することになります。

5.当院での治療件数(表3)

昨年度までの2年間の推移をお示しします。TACEが減少している一方で全身化学療法件数が増加しています。肝内多発病変患者さんに対してTACEを選択せず全身化学療法から導入する傾向にあることを示しています。

6.当院での治療成績(図4)

全国の成績に比べても見劣りのしない成績です。